かつては武器として作られ、現在では美術品・工芸品として愛されている日本刀。
映画やドラマ、アニメなどの影響もあり、日本刀に興味を持つ人は年々増えています。
この記事を読んでいるあなたは
「日本刀って何からできてるの?」
「日本刀の作り方が知りたい」
と、感じているのではないでしょうか?
日本刀の作り方や原材料などについて、気になる方は多いです。
そこで今回は、日本刀の作り方を12の工程に分けて詳しく解説していきます。
また、原材料となる素材についても紹介していきます。
以下の記事では日本刀の歴史や種類、特徴などを網羅的に紹介していますので、日本刀全般について知りたい人はどうぞ。
→【伝統工芸】日本刀の歴史や種類を解説|特徴や愛刀蒐集家も紹介
日本刀を作るための素材とは?
まずは、「日本刀は何を原材料としているのか?」という疑問についてお答えしていきます。
日本刀は玉鋼を使って作られる
日本刀は、「玉鋼」(たまはがね)という素材から作られます。
玉鋼の原材料は鉄、または砂鉄で、これらを加工して玉鋼を生成します。
日本は、鉄鉱石が採掘できる鉱山にあまり恵まれなかったこともあり、砂鉄から玉鋼を作ることも多かったのです。
「折れず・曲がらず・よく切れる」という特徴を持つ日本刀を作るために、玉鋼は必須の材料と言えるでしょう。
玉鋼はたたら製鉄の一方法「けら押し法」で作られる
日本刀の素材となる玉鋼を作る際には、たたら製鉄の一方法「けら押し法」が用いられます。
たたら製鉄とは、6世紀頃に誕生した日本独自の鉄生産法のこと。ジブリ映画もののけ姫に出てくる「たたら場」がこれにあたります。
たたら製鉄一方法である「けら押し法」は、「火床」の中に材料の砂鉄と木炭を入れ、「鞴」(ふいご)と呼ばれる風を送る装置を用いて燃焼させ、鉄に含まれる炭素の割合を調整する製鉄法です。
約70時間も作業を続ける必要があり、不純物を取り除くことで質の高い「玉鋼」が出来上がります。
日本刀の作り方
日本刀の作り方は刀工や流派によって変わりますが、主に以下の12工程を経て完成します。
- 工程1.玉鋼
- 工程2.水へし
- 工程3.積み沸かし
- 工程4.折り返し鍛錬
- 工程5.造り込み
- 工程6.素延べ
- 工程7.火造り
- 工程8.生仕上げ
- 工程9.土置き
- 工程10.焼き入れ
- 工程11.樋入れと彫刻
- 工程12.銘切り
それぞれ詳しく見ていきましょう。
工程1.玉鋼
まずは、日本刀の素材となる玉鋼を作ります。
先程紹介した通り、たたら製鉄の一方法「けら押し法」で砂鉄を製鉄します。
玉鋼を作るときには、鉄に含まれる炭素の割合を調節するため、炎の状態を見ながら砂鉄や木炭を入れ、不純物を取り除きます。
工程2.水へし
生成した玉鋼を、叩いてなじませながら約5mmの厚さに引き伸ばします。
その後、水に入れて急速に冷やす工程を「水へし」と言います。
冷やした玉鋼は、割って硬い玉鋼とやわらかい玉鋼に分別され、硬さによって刀身のどこに使うかが決められます。
刀身の外側に使われる玉鋼を「皮鉄」(かわがね)、刀身の芯となるやわらかい玉鋼を「心鉄」(しんがね)と呼びます。
工程3.積み沸かし
鋼を割ったあとに、鋼を積み重ねて「積み沸かし」の作業に移ります。
積み重ねて積んだ鋼が崩れないよう、水でぬらした和紙にて全体を包み固定し、藁灰(わらばい)をまぶし、泥汁をかけます。
そのあと、火床に入れ、熱していきます。沸かしが不十分だと、後に鋼を叩いた際に崩れる可能性があるので、重要な工程になります。
工程4.折り返し鍛錬
鋼を溶かし、塊になるまで叩いた後には、不純物を取り除くことと、炭素量を均一化させるために折り返し鍛錬と呼ばれる作業に移ります。
熱した玉鋼を大槌で叩いて長方形に延ばし、鏨(たがね)で切り込みを付け、半分に折ってまた叩くことを繰り返していきます。
皮鉄と心鉄は別々に鍛えられ、皮鉄は約15回、心鉄は7〜10回ほど折り曲げます。
玉鋼は鍛錬するほど硬くなるとされていて、「折れず・曲がらず・よく切れる」日本刀を作る上で重要になります。
折り返し鍛錬は日本特有の作業工程で、日本刀の特徴の1つと言えるでしょう。
工程5.造り込み
硬い皮鉄とやわらかい心鉄を組み合わせる工程を「造り込み」といいます。
硬く曲がりにくい皮鉄と、柔軟性があり折れにくい心鉄を一体化させることで、丈夫で折れにくい日本刀が出来上がるのです。
工程6.素延べ
皮鉄と心鉄を造り込みで一体化させたら、「素延べ」という作業で棒状に延ばします。
この段階で鋒/切先(きっさき)を形成し、持ち手部分である「茎」(なかご)と刀身との境目となる「区」(まち)を付けていきます。
工程7.火造り
素延べした玉鋼を日本刀の形に打ち出す作業を「火造り」といいます。
熱しながら叩いて日本刀の形にしていく作業で、反りなどを含めた完成形をイメージしながら刀匠が行っていきます。
「火造り」の工程を行う刀匠の腕によって、美しい日本刀が出来上がるので、技術が光る場面でもありますね。
工程8.生仕上げ
「生仕上げ」では、低い温度で熱して冷まし、平地と鎬地を叩きます。
この後にヤスリとセン(手押しカンナ)を使って曲がりやねじれ、厚みを整え、表面を平らにしていきます。
工程9.土置き
焼入れ前に、焼刃土を刀身に塗ることを「土置き」といいます。
基本的に刃の部分には薄く、棟の部分には厚めに塗ります。
焼刃土の厚みが違うことで境目に刃文ができます。刃文は日本刀の個性とも呼べるもので、刀工や流派によって焼刃土の塗り方は変わるのです。
工程10.焼き入れ
「焼き入れ」は刀身を丈夫にし、切れ味の良い日本刀を作るための作業です。
均一に刀身を熱して、一気に湯舟に入れて冷やします。
急激に冷やすことで、玉鋼は伸縮を起こし、刀身は峰/棟側に強く反り返るのです。
工程11.樋入れと彫刻
「樋入れ」とは、日本刀の刀身に細長い溝を彫る工程です。
樋を入れることで、日本刀を軽くしたり、見栄えを良くする効果があるとされています。
また、刀身に動物や植物、文字などの彫刻を入れる作業もあります。
彫刻は所有者や制作者の好みによって様々な種類が存在します。
工程12.銘切り
最後に行われるのが、刀匠が自分の鍛えた作品に鏨(たがね)一本で名前を刻む「銘切り」です。
制作者の名前や居住地、制作年月日など、誰が作った日本刀なのかが分かるよう制作者の情報が刻まれます。
博物館・美術館に展示されている日本刀には、銘が刻まれているので注目してみてください。
銘切りが終わり、仕上げ研ぎを行ったら日本刀が完成となります。
まとめ
今回は、日本刀の作り方と原材料について解説してきました。
砂鉄から生成される「玉鋼」を素材とし、さまざまな工程を経て日本刀は完成します。
多くの工程を必要としますが、「折れず・曲がらず・よく切れる」日本刀を作るためには、どれも重要な工程になるのです。
中でも「玉鋼」を使い、「折り返し鍛錬」の作業があることが日本特有の鍛刀技術・製造過程とされています。