着物を快適に着るためには、気候や気温に合ったものを選ぶことが重要です。気候に合わせて、寒い季節には暖かくする工夫を、暑い夏には涼しく過ごすための工夫が着物にはなされています。
また、日本には昔から季節を大切にする風習がありました。仕立て方や素材、見た目の変化とともに着物を着る楽しみを味わってみてください。
着物に季節はある?月別に解説
着物には大きく分けて「袷(あわせ)」「単衣(ひとえ)」「薄物(うすもの)」の3つの種類があります。それぞれ特徴を解説していきます。
袷
袷は、文字通り表地と裏地の2枚の布を合わせて作られます。布が重なっているので、冬にも暖かく過ごせます。時期的に成人式の振袖は合わせである場合が多いです。
胴裏と八掛(はっかけ)という部分に分けられ、袖口や八掛は着て動くと見える部分でもあるため、表地に合わせて色合いになっている場合もあります。
適応時期:1月~5月、10月~12月
単衣
単衣は、裏地のない1枚の生地で作られます。袷よりも軽く、涼しく過ごすことができます。一般的に6月と9月に着るものとされていますが、下に着る襦袢や下着などで調整しやすいので春や秋には非常に重宝します。
適応時期:6月、9月
薄物(夏着物・浴衣)
夏に着る涼しさに特化した夏用の着物を薄物と言います。薄物には、夏着物と浴衣があります。裏地はなく、紗(しゃ)や絽(ろ)といった透ける程薄い織り方の織物で作られます。
格でいうと、絽がフォーマル、紗はカジュアル寄りです。中に着るものが透けるので、襦袢の色にも気を遣う必要があります。
浴衣は湯上りの寝間着として使用されていた歴史があります。また、暑い夏のカジュアル着としても使用されてきました。
浴衣と夏着物の違いは、①襦袢を着るか②透け感があるか③足袋を履くか④合わせる帯の格 などで見分けることができます。しかし、現代では浴衣を着物風に着ることもあるので一概には言えません。あまり神経質に線引きをせず、おしゃれとして楽しむのがよいでしょう。
着物カレンダー
目安となる月は上の図のようになっています。ただ、あくまで目安なので、例えば5月で20度を越えるような暖かい日に無理して袷を着ないといけないわけではありません。状況に合わせて判断してみてください。
温度調整には素材も大切
着物の素材によっても、保温性や通気性が変わってきます。
正絹は保温性と通気性に優れるため、寒い季節に最適です。また、ウールは羊毛コートが暖かいように単衣でも袷と同じくらい暖かいものもあります。
春~夏、初秋にかけての単衣や、浴衣に用いられることが多い綿は吸湿性もあり、暑い季節によく用いられます。麻の素材で作られた着物も通気性がいいので夏におすすめです。
ポリエステルは熱が籠りやすいため、夏にはあまり向きません。
着物の季節と柄
日本は季節を大切にする文化があるため、着物の柄と切っても切れない関係です。
季節による柄の違い
季節を感じる着物の柄は、自然文様が代表的です。四季折々の草花や自然現象をモチーフにした柄は定番で用いられます。春の桜、初夏や夏の紫陽花、秋の紅葉、冬は椿など、花の種類に限っても多数存在し、我々の目を楽しませてくれます。
その季節のものを取り入れる場合もありますが、反対に暑い季節だからこそ、雪の結晶の柄や冷たい色味の夏着物や浴衣を着て涼を取る、という場合もあります。
柄を先取りするとは?
季節に合う柄の着物を着るのはわかりやすい基準ですが、さらに深く知っていくと、花であれば、その花の咲くピークの季節ではなく、半月ほど早く着るのが粋、とされます。これは先取りしなければならないという訳ではなく、あくまでトレンドを先取りするのがおしゃれ、とう感覚的なものです。
季節に合った着こなしのコツ
季節に関わらず、着付け方法は大きく変わりません。しかし、寒い時期に暖かく、暑い時期に涼しく着るために、少し変化を付けることはよくあります。
冬は着物の下にたくさん着こんだり、襦袢も袷のものを用いたりして暖かく着ることができます。
現代の衣服を用いて、襦袢や肌着だけでなくタイツ(レギンス)を履いたり、ヒートテックを着たりすることで、暖かさがかなり変わります。ただし、裾や袖口から見えてしまうこともあるので注意が必要です。
夏の時期は、通気性をよくするために襟元を通常よりもゆったり着付けることもあります。帯の間に保冷剤をはさむのもおすすめです。
まとめ
今回は、季節によってどのような着物を着ると快適に過ごせるか、解説してきました。
昔からの基準はありますが、それらは快適に過ごすための目安として伝えられてきたものです。何月だからこの着物は着なければならない、と囚われずに、その都度快適な着物を選んで着ましょう。