「アニメ」や「漫画」は世界的に大人気で、ジャパニーズカルチャーをけん引する存在となっています。現在の日本文化の象徴である「アニメ」と、古来からの日本の文化である伝統工芸品をなんとか融合できないかと考えたのが、この「アニメ八十八箇所巡り」です。お遍路巡りになぞらえて、日本各地のアニメの聖地とその地域に伝わる伝統工芸品を紹介していきます。
Free!とは

『ハイ☆スピード』という文庫本を原作に、男子水泳部が繰り広げる青春を描いたスポーツアニメ。
2013年にテレビアニメが放送されると、瞬く間に人気となり劇場版や主人公たちの昔を描いたサイドストーリーの放送がされるなど、シリーズ化されました。
制作を手掛けた京都アニメーションは、Free!制作まで男性向けのアニメを作ることが多く、当時はFree!の制作に不満や不安も多かったそうです。しかし、Free!制作により新たに女性視聴層も獲得し、以降は視聴層の幅を広げ人気アニメを制作。
メインキャストの声優には島崎信長、鈴木達央、宮野真守といった豪華キャストを迎えたことで話題に。
さらに作中のオリジナルソングも数多く制作され、イベントでは視聴者による投票でランキング形式にされるほど、作品とともに音楽も人気を誇ります。
2023年に10周年を迎え、大規模イベントが開催されたり、数々のブランドやショップとコラボ。
アニメとしては完結しているものの、根強いファンがいることや再放送による人気が伺えますね。
あらすじ
主人公の七瀬遙(ななせはるか)は小学生の頃からスイミングクラブに通い、泳ぐことに没頭していました。
同じクラブに通う橘真琴、葉月渚、松岡凛と小学校卒業前の大会で優勝すると、それぞれ別の道へ。
中学生の時、水泳で留学をしていた凛とのレースをきっかけに遙は水泳と距離を置くようになりました。その後凛との関係性もぎこちないまま高校へと進学…。
高校で再会した遙と凛。凛の前とは変わった態度に戸惑いながらも、遙は少しずつ泳ぐ気持ちを取り戻していきます。
凛以外の3人(遙・真琴・渚)が通う岩鳶(いわとび)高校で水泳部を作り、遙はもう一度水泳への情熱を高めます。
一方で留学から帰国した凛は水泳部の強豪校へ入学。
ライバルとしての立ち位置に戸惑いつつも、気持ちのすれ違いを乗り越え、絆を深める4人。それぞれの場所で活躍し、もう一度4人で泳ぐことを目指します。
高校生最後の年、遙が通う岩鳶高校が全国大会出場。凛もまた、その姿を見て水泳を続けることを決意。
水泳を通し、それぞれの目標に向けて世界へと羽ばたいていく…。
劇場版や特別編では中学生時代を詳細に描くストーリーや、キャラクター個人に焦点を当てたサイドストーリーが展開されます。
【聖地巡礼】Free!に登場する鳥取県岩美町の場所は?
Free‼のロケ参考地、鳥取県岩美町。
アニメに登場する聖地を紹介していきます。
それぞれの描かれたシーンを踏まえながら解説していきますね。
Free!の聖地1:田後(たじり)港

日本海に面する漁港。歴史は古く、江戸時代後期から防波堤が作られ現在に至ります。
底引き網漁が盛んで、多くの漁船が停泊。夜明け前から港にすだれを広げ、そこに干されたスルメで港がいっぱいになる光景も印象的です。
晴れた日には釣り人も多く集まるそう。
アニメでは第5話、無人島へ夏合宿に行く際にこの港から出発。主人公たちが練習のために出発した場所。実際に歩いて、ワンシーンを体感してみるのもいいですね。
『田後港』の詳細
住所 | 岩美郡岩美町田後 |
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アクセス | JR鳥取駅から車で約40分、鳥取空港から車で約40分 |
Free!の聖地2:田後神社

田後神社の歴史は古く、1682年に同じ町内の荒砂神社の分社として創建。明治時代からは漁業の神様「恵比寿様」を祀っています。聖地1で田後港を紹介したように、漁業が盛んな地域なため、長年漁村の氏神として親しまれてきました。
例祭では、神様を乗せた神輿が町をまわり、その中でも「田後のけんか祭」と呼ばれる場面が有名。神輿と御舟(みふね)がぶつかり合う迫力ある行事があり、神輿が勝つと地域安全、御舟が勝つと大漁とされています。
作中では主人公の家へと向かう道が、まさに神社へと続く道を再現した場所。ファンの間では最重要スポットとして注目されています。
『田後神社』の詳細
住所 | 鳥取県岩美郡岩美町田後501 |
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アクセス | JR岩美駅から車で約10分 山陰自動車道浦富ICから約5分 |
Free!の聖地3:田後公園

知る人ぞ知る展望スポット。標高30mほどの日和山(ひよりやま)に位置し、漁港と村を一望できる場所です。
展望台が2か所あり、それぞれの景色を楽しむことができます。
第一展望台では海が目の前に広がるダイナミックな景色を。第二展望台では、漁港を含めた村全体と、青く澄み渡る海が広々と見えます。
展望台までの道のりは自然に囲まれており、緑を感じつつも海を堪能できる絶好の場所。
1話から主人公たちが話しているシーンはまさにこの展望台。景色を楽しむ中でも、アニメのワンシーンを体験できますね。
『田後公園』の詳細
住所 | 鳥取県岩美郡岩美町田後509 |
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アクセス | 浦富海岸口(バス)より徒歩25分 |
Free!の聖地4:網代隧道(あじろずいどう)

大正元年(1912年)に完成した隧道(トンネル)。
100年以上利用されていますが、完成当時は海辺に面していたため、ここを通らないと行き来ができないという生活に必須な道でした。
現在はレンガ作りから、一部コンクリートに変わっていますが、とても風情がある道です。今でも利用できるように地域の方々によって改修され、大事に使われていることがわかります。
7話でも大事なシーンで描かれており、聖地巡礼には外せないスポットですね。
少し奥まったところにあるので、訪れる際は迷わないよう注意しましょう。
『網代隧道』の詳細
住所 | 鳥取県岩美郡岩美町網代 |
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アクセス | JR岩美駅から車で約10分 |
岩美町の伝統文化
鳥取県の最東北端に位置する岩美町は、海・山・温泉を丸ごと味わえる自然豊かな町。
また、美しい自然だけでなく松葉がにが日本一の漁獲量を誇るなど、海の幸も豊富です。
町全体がアニメFree!のロケ参考地になっており、2025年5月25日には岩美町とFree!のタイアップ公式イベントも開催される予定。
アニメを通して岩美町のすばらしい自然や食が楽しめそうですね。
今回はそんな岩美町の伝統的な文化をご紹介していきます。
伝統工芸1:浦富焼(うらどめやき)

江戸末期から明治維新にかけて浦富海岸周辺で焼かれていた磁器。
国産品を奨励する政策のもと、当時は日常雑器として染付と呼ばれる青い絵付けをされた器が制作されていました。
その後明治維新により藩が廃止され、生産が途絶えたものの1971年に同じ場所に窯を設置。再び浦富焼が地域の生活に根付くようになり、伝統の技法を守りつつ、現代のライフスタイルに合った器づくりが始まりました。
浦富焼は、地元でとれる化粧土を塗っていることもあり、土地の特徴を生かして制作されています。
手にした時に岩美を感じられる、素敵な器ですね。
伝統工2:木彫十二支

『おぐら屋』という200年続く工房で生まれた伝統工芸品。
もともと『木地師(きじし)』という”ろくろ”を使って木工品を作る職人の家系で、そのルーツは平安時代までさかのぼります。
おぐら屋は代々茶道具や人形などを制作していましたが、『日本に古くから伝わる干支を大切にしてほしい』という思いから、八代目の小椋幸治さんが木彫十二支を考案。
現在も伝統が引き継がれ、家族で制作しています。
すべて手作業で制作するため、ひとつひとつが唯一無二の工芸品。
素朴ながらも愛くるしい表情、思わず手を取ってしまいたくなりますね。
伝統芸能1:牧谷のはねそ踊り

県指定無形民俗文化財に登録され、地域の中で引き継がれる踊り。
諸説ありますが、約400年前の戦国時代に武士が農民に変装して踊りを教え、村中が踊りに没頭している隙に城に攻め入りました。その踊りを教えたことがはねそ踊りの始まりと言われています。
踊る際に裾を跳ね上げるようにすることから『はね裾』と呼ばれ、いつの間にか『はねそ』と呼ばれるようになりました。
もともとは盆踊りとしてお盆の時期に夜通し踊られていましたが、現在は町の納涼祭などで地域の方々が踊っています。
伝統芸能2:岡森神社獅子舞

岡森神社は創建年代は不明ですが、1718年の棟札が現存。江戸時代には岡森大明神として地域の信仰を集めました。
1916年には御湯神社に合併されましたが、1949年に再び分離し、独立した神社に。
一時は神事や祭りが途絶えましたが、昭和50年頃に村を元気にしたいという想いや、子どもたちに伝統を見せたいという地域の声によって、祭りが復活。
その後も続けられ、現在に至っています。
春祭で行われる獅子舞は悪霊退散や厄除けとして、子どもたちが引く屋台と共に集落内を巡回します。
郷土料理1:いぎす

『いぎす』とは、えごのりとも呼ばれる『いぎす草』という海藻の一種を使った料理。凝固剤を加えずとも自然に固まります。寒天やところてんと同じ原理ですね。
いぎす草は乾燥させて保存。食べるときは水で戻し、煮てから容器に入れて固めます。
精進料理や祭り、冠婚葬祭の料理にふるまわれることが多く、中部地方で長年にわたり食べられてきた料理。
海の恵みが感じられる豊かな香りが広がり、調味料と組み合わせることで、さまざまな風味を楽しめます。
食べる機会があったらいろいろな味を試してみたいですね。
郷土料理2:栃餅(とちもち)

昔は鳥取県の山里ではお米があまり収穫できず、山で採れる栃の実を工夫して食べていたことが始まり。古くは縄文時代から食べられていましたが、そのまま食べると非常に苦いため、あく抜きの作業が必要。
あく抜きをした栃の実をもち米と一緒に蒸し、ついてお餅として食べますが、おしるこや中に餡をいれて和菓子として食べるのも人気です。
昔の人たちの知恵と工夫により生まれた美味しい食べ方。
栃の香ばしさを感じられる栃餅、ぜひ召し上がってみてはいかがでしょう。
聖地巡りをした人の口コミ
まとめ
高校水泳部の熱い青春を描いたアニメFree!。ストーリーは完結しているものの、今でも根強い人気を誇る作品。今回はそんなアニメFree!第一期の聖地と、その地域にまつわる伝統文化をご紹介しました。
参考ロケ地にしているとのことだけあり、作中で出てくるシーンがそのまま目に映るかのような場所ばかりです。主人公たちが青春を過ごした町、ファンの方は一度は行ってみたくなるのではないでしょうか。
町をあげて公式イベントを行っていることもあり、これからもFree!×岩美町から目が離せませんね。
そんな素敵な岩美町を含めた地域の伝統文化、皆さんご存じでしたか?
工芸品、食文化、見て楽しめる伝統芸能まで、様々な歴史を知ることでより深く聖地を楽しめます。工芸品や郷土料理はお土産としても購入できるので、お土産として手に取ってみてはいかがでしょうか。
聖地巡礼で岩美町を訪れた際には、ぜひ伝統に触れ、岩美町のもっと素敵な発見、体験をしてみてくださいね。